海から少し離れた里山の中。豊かな森に囲まれた場所に美馬森(みまもり)八丸牧場はあります。ここは、単に乗馬体験を提供するだけの牧場ではありません。馬の持つ魅力を活かし、自然や自分について考えることができる場です。
「馬は、簡単に自分の自由になるペットではありません。しっかりコミュニケ―ションをとらないと動いてくれないものです。子どもたちには、どうすれば心を通わせることができるのかということを考えるところから、人や動物、自然と対話する方法を知ってほしいと思っています」。ホースコーチングのインストラクター、八丸由紀子さんはそう話します。
八丸牧場には、馬の世話をしたり手綱を引いたりしながら、身体でコミュニケーションをとる方法を知るプログラム、森の木々を使って工作をしたり丸太切りをして自然と触れ合うプログラムなど、牧場と里山という環境を活かした多彩なプログラムがあります。ここには守るべきルールはありますが、「今からこれを始めてください」というようなスケジュールはありません。子どもが自ら「やりたい!」と思う気持ちを尊重し、自分で考え、好きなことに集中する時間を作りたいからです。
八丸健さんは、「私たちの役割は、子どもたちに『ありのままの状態』を用意しておくこと」だと話します。
「大人が手を出すことを極力無くし、子どもたちが直に馬や自然と向き合う環境が大切だと思います。それは、何も要求されない時間、と言ってもいいかもしれません。自分の興味のままに、どんどん好きなことにチャレンジしていくと、自分の中のコア(核)と出会うことができます。ここでの体験が、そんな出会いが生まれるきっかけのひとつになれたら嬉(うれ)しいです」